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STORY-I


物話「7日間の新しい世界」前編より



若き王女


あるところに、音楽の精霊と仲の良い若き
王女がいた。王女は生まれてすぐ父母が
病に侵されてしまい、孤児院に引き取られて
五歳まで過ごしていた。
そこには8人位の子供と先生が一人。
皆私情にはいろんな問題を抱えていたが、
そんなことは空のどこかに吹き飛ばし、
いつも明るく元気に大自然の中で遊んでいた。
皆の遊びについていけなかった王女は
いつも一人で静かに遊んでいた。
この頃から一人で遊ぶことが好きだった。

王女が六歳になる頃、
新しい家に引き取られた。
そこは昔、城下町があり
文芸豊かな人や商人が集まる華やかな町。
人の出入りが激しい広い城へ移り住み、
生活が一変していった。

王女は小さいながらも
感じていたことがあった。
世の中の表と裏、
光が当たる世界と
当たらない闇の世界があることを。


音楽の精霊


王女が十四歳の時、音楽の精霊に出会った。
それは皆が寝静まった深夜。
精霊が現れて"湖の様な場所"に
連れていってくれたというのだ。
このことを家族や友達に話した
くてうずうずしていたが、
王女は自分だけの秘密
として心に閉まうことにした。



ばあやの死


王女は音楽に没頭するあまり
他のことは何も手につかなかった。
それが原因で友達との争いや
恋人からの裏切りを何度も繰り返し、
最終的には金目な物を全て取られ、
若くして底に落ちた。

そんな悲惨な時、
ばあやの突然の死に直面する。
ばあやの前で自分の醜さ愚かさを恥じ、
全てをなくしてしまった王女は
小さく萎み死んでしまいそうな姿だった

家族、友人、恋人、音楽、
自分の夢、未来・・・
本当に全てをなくしてしまった王女。
気配が薄く肌の色も青白い、
姿が風景に透けてしまいそうな
王女を音楽の精霊は見守っていた。

"王女には
まだ一つだけ
できることが
残されている。"

と精霊は王女に伝えた。

それは王女を地の底に陥れる力もあれば
感動を与え震えたたせる威力もある
唯一の

"音楽を創造する"

その力であった。

王女は音楽が栄えていると言われる、
別の世界へ行くことを決心した。



別世界


王女は全てを捨てて別世界へ舞い降りた。
そんな王女には一つだけ救いがあった。
それは音楽の精霊が着いてきてくれたのだ。
この世界では言葉がなくてもヒトを見極める能力と
ヒトの能力の限界の壁を超える力を習得できた。
そこで同じ能力を求める4人の同志に出会った。
長年に渡り客観的に元の世界を見る事ができた王女は
ふと気づくのだ。

"元の世界がある規則によって動かされていることを"


元の世界には別世界への憧れを強く抱くように
インプットされる何か仕組みがあった。
また、他の世界より十年遅れていると聞いていた
王女は別世界へ修行に行ったのだが、
そうではなかった。
むしろ元の世界の方が確立した
豊かな仕組みが存在していたが、
それが表舞台に出てこないから厄介だった。

いずれ確立した仕組みは
民衆の力と闇の力により崩れてしまうのだ。
ヒトの力は一人一人が異なった
"正"を持っているから果てしない領域だ。

"何かできないだろうか。"
と王女は思考するようになった。
そして、元の世界へ戻ることを決心するのだ。

元の世界の心臓部

"闇世界"へ


闇世界


全ては誰かの欲望の配下となり存在し得る
ピラミッド構造。
王女はこの闇世界をこう例えていた
「これは戦後の名残なんだ。
誰も恨んではいけない」と。

太陽の光が差し込むことはない
闇世界では昼と夜の境目がなかった。
時間が無情に過ぎていく
休息のない世界の中で
王女は音を司る者として
自ら習得した技術を注ぎ込んでいた。

十年という時が経ち、王女は心や体が
ボロボロに壊れ、闇世界ではもう息が
できなくなってきていた。
闇の世界を遠のく時が来たのだと
王女は悟った。
不思議とその頃には闇世界のヒトたちと
仲良くなっていた。
しかしながら、王女はもう
創造する力が使えなくなってきて
いることに気づいていた。

そして闇世界を去る時、
"Mystery Puzzle"を発見するのだった。
それには三つの奇妙なパズルが並んでいたが、
王女はなかなかキーワードを解くことができず、
途中で飽きてどこかにしまい込んでしまった。
パズルの裏にはこうメッセージが残されていた。

"君の創造する何かが
世界中の生命の躍動に
関わることができる
魔法だとしたら・・・"





[後編へ続く]